世界オタク研究所(WOI)は、7月4~7日に米国  ロサンゼルスで開催された「Anime Expo 2019」に参加、「つづきみ」事務局の協力を得て、今年4月、7月放送開始の新作アニメ46タイトルのPVを一気に見せるイベント「WOI Anime  Trailer Screening Party supported by TUDUKIMI 」を開催しました。

Anime Expo

 「Anime Expo」(以下、「AX」)は4日間の開催期間に延べ35万人のアニメファンを集める北米を代表するアニメコンベンションです。 1922年から開催されており、会場はロサンゼルス・コンベンションセンター(LACC)とLACC近くのJ.Wマリオットホテル等を使用しています。

 LACCの巨大な会場は3つのスペースに分かれており、入口正面のExhibit Hallには企業ブースや物販ブースが設けられ、地下駐車場を使ったKentia Hallには二次創作系のアーティストが小ブースを構えるアーティストアレイ、Entertainment Hallには、デジタルゲームを展示、体験する企業ブースや、コスプレ撮影用のスペースが設けられています。

 Exhibit Hallにブースを構える企業は、東映アニメーション、バンダイナムコ、講談社、KADOKAWA、ANIPLEX等の日本のコンテンツ企業や、Crunchyroll、FUNIMATIONといった米国企業ですが、このエリアの半分はアパレルやフィギュアを販売する物販ブースです。「AX」を訪れるファンの大きな目的のひとつが商品の購入であることもあり、殆どの企業ブースでも商品の販売が行われていました。

 また、こうした展示や物販の他に、2000名~3000名収容クラスのホールから100名前後収容の部屋まで大小のスペースが設けられ、新作のプレミアからアカデミックのシンポまでの様々なパネル(トークイベント)やメイドカフェ(執事カフェ)、カラオケ大会、上映会等が開かれていました。
 筆者(亀山)は2017年に続いて2度目の「AX」参加になりますが、このイベントの特徴はこの大小のホール、スペースを使ったパネル等、催事の多様さにあると考えています。

 パネルに使われるスペースで最大級のものは2000名程度を収容するホールで、LACCとJ.Wマリオットの会場を合わせてこのクラスのホールが4つあります。4日間の会期中には、ここで様々なコンテンツ企業によるパネルが行われて、多くのファンを集めました。以下に人気を集めたパネルを挙げると、
作品系では

  • 「My Hero Academia Hero Panel & Season 4 Premiere」(僕のヒーローアカデミア)
  • 「Rascal Does Not Dream of a Dreaming Girl U.S. Premiere presented by ANIPLEX of America」(青春ブタ野郎は夢みる少女の夢をみない)
  • 「Pokemon : Mewtwo Strikes Back-Evolution! Exclusive Screening」(ポケモン新作映画)
  • 「PROMARE Premiere Event with Studio TRIGGER」(プロメア)
  • 「Demon Slayer : Kimetsu no Yaiba Special Event」(鬼滅の刃)
  • 「The Promised Neverland at Anime Expo」(約束のネバーランド)
  • 「Is It Wrong to Try to Pick Up Girls in a Dungeon? Anime Season 2 with Author Fujino Omori」(ダンジョンで出会いを求めるのは間違っているだろうか?)

メディアや制作会社のような企業系では

  • 「SHONEN JUMP Official Panel」(少年ジャンプ)
  • 「Crunchyroll Industry Panel」(配信プラットフォーム:クランチロール)
  • 「Aniplex of America Industry Panel」(アニプレックス米国法人)
  • 「VIZ Media Official Panel」(マンガ出版社:VIZメディア)
  • 「Studio TRIGGER panel : PROMARE and New Title Announcement」(制作会社:TRIGGER)

 この他にも大型の会場では「ONEPIECE」の20周年、「ガンダム」の40周年のパネルや、Netflix、ファニメーションのような米国企業、MAPPA、A-1 Picturesのような日本の制作会社によるプレゼンテーションが行われました。大友克洋さんがゲストとして登壇して、自身が監督する新作や「AKIRA」の新作アニメ等の製作が発表されたのも今回の「Anime Expo」のパネルです。

アプリ

 来場者は「AX」に関する情報を全て、アプリを使ってチェックします。アプリには会場内の地図の他、会期中に行われる全ての催事の場所、内容、ゲスト等の情報が網羅されており、参加者はアプリを使って、興味あるイベントをチェックし、アプリ上に”My Schedule”として自分用のスケジュール表を作ることができます。
 さらに、参加者が自分のスケジュールに組み入れた数はカウントされ、各催事の人気度を表す“What‘s Hot”というランキングが1位から647位までリアルタイムで更新されていきます。スケジュールに組み入れた人が全員催事に参加するということはないのですが、各催事の主催者にとっては、この数字が来場者数のバロメーターとなります。

「つづきみ」

 WOIでは、今回「つづきみ」事務局の協力を得て、「WOI Anime Trailer Screening Party supported by TUDUKIMI」をLACC 内の404ABという200名程度収容の会場で開催しました。
 「つづきみ」は、有志のスタッフがアニメの権利元の協力を得て、2016年から開催を続けているイベントです。開催は1、4、7、10月の各クールが始まる直前で、各クールに放送を開始するテレビアニメや同時期に公開する劇場用アニメ等のプロモーションビデオ40~50タイトル分を、MCやゲストのトークを交えながら一気に見るという内容です。
 WOIでは、研究機関としての活動を行う以外に、日本のコンテンツを海外に紹介し、海外のコンテンツを日本に紹介する機能を持ちたいと考えており、方法を模索する中で「つづきみ」と出会い、「つづきみ」事務局の協力を得て、同タイプのイベントを海外で現地の言語を使って、実験的に開催する運びとなりました。

「WOI Anime  Trailer Screening Party supported by TUDUKIMI」

 今回の「AX」での開催の目的はイベントの開催を通じて、北米のアニメファンに日本のアニメのバラエティの幅を実感してもらい、その反響を知ることです。
 開催にあたっての制作費はWOIの親元のCiP協議会が用意するとともに、一部については経済産業省が行うコンテンツグローバル受容創出等促進事業費補助金(J-LOD)の支援をいただいています。
 「つづきみ」事務局には、権利元からの各作品のPVの使用許諾と映像素材の取得、内容やスタッフ等の番組情報テキストを組み込んだ画像の制作、ゲストの紹介等様々な面でご協力をいただき、「AX」を運営する日本アニメーション振興会との交渉にあたっては、IOEA(国際オタクイベント協会)にご協力いただき、全体プロデュース、台本作成及び当日の運営等をWOIが行いました。
 「AX」ではこの種のイベントは初めての開催で参加者の内容理解が全くないというところからスタートするため、MCには多数のフォロワーを持つユーチューバーを起用しました。メインMCのThe Anime Manは250万人、Reina Scullyは75万人のフォロワーを持つ人気者です。さらにゲストはAnime News Networkの編集長Zac Berschyさんと、日本の「つづきみ」にも出演しているアニメジャーナリストのRichard Eisenbeisさんです。 

 これだけの出演者を揃えても、アプリ上の参加予定者数はなかなか上がらなかったのですが、開始時間の6日11時30分には、写真のように会場を埋める参加者を集めることができました。「AX」のパネルの中では3時間の長さは最長の部類に属するため、参加者の出入りはあったものの、MCの問いかけに参加者が応えるやりとりがあったり、人気シリーズの新作に喜びの声が上がるなど、濃い日本アニメファンと思われる参加者には十分楽しめるイベントとなったようです。
 勿論、海外での開催が初めてだったこともあり、今後のこの種のイベント開催に生かせるような発見や反省点も多々ありました。この点についてはいずれどこかの機会でレポートしたく思いますが、とにかく一定の集客ができて無事に終えられたことをご報告しつつ、ご協力いただいた皆様に御礼いたします。

 主催者の発表によれば、今年の「AX」も延べ35万人を越える参加者があったとのこと。この数字自体はここ数年変わっていませんが、日本のアニメ産業界の新情報発表の場はほぼ「AX」に集中してきている感があります。そこには日本のアニメの活躍の場の拡大あるいは海外依存度の増大が表れており、北米最大のアニメコンベンションである「AX」の存在感は今後も高まっていくものと思われます。また、WOIとしては今後もこの場所での発信について取り組みを続けていきたいと考えています。

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