WOIでは、「Manga Barcelona」内でIOEA(国際オタクイベント協会)の主催で実施したアカデミック・セッションのお手伝いに行ってまいりました。
 「Manga Barcelona(マンガ・バルセロナ)」は、1995年から毎年開催を続けてきた「Salon del Manga de Barcelona(サロン・デル・マンガ)」が25回目の開催を機に改名したもので、毎年15万人前後の参加者を集めるヨーロッパでも有数のポップカルチャーイベントです。今年は、10月31日~11月3日の4日間、1992年のオリンピックのメイン会場があったことでも知られるモンジュイックの丘のふもとに位置するフィラ・バルセロナ・モンジュイックという、東京ビッグサイトクラスの大型会場で、盛大に開催されました。主催者の発表によれば、今年の参加者は152,000人とのことです。

 「Manga Barcelona」の特徴は名称の通り、マンガが中心であることです。勿論、アニメに関する展示もありますし、任天堂の大きな展示ブースもあるのですが、現地でマンガを扱う出版社のブースやマンガの販売コーナーが多数あり、スペインでのマンガの人気浸透が窺えます。
 会場近くのカタルーニャ美術館では、手塚治虫先生の原画展も開催されており、熱心なマンガファンが真剣な表情で原画を見つめる姿が印象的でした。

 また、会場内のステージでは、「世界コスプレサミット」の予選が行われていました。コスプレが盛んで、コスプレ姿の参加者が目立つのは海外のアニメコンベンションに共通する風景です。

 会場では、ステージイベントや企業ブース、販売ブースなどの他に多くのイベント内イベントが行われます。現地のマンガ出版社の団体が設けたアワードの表彰式や、アニメの上映会、作家を招いたセッションなど内容は様々ですが、今年、IOEAでは、「OTAKU SUMMIT PREVIEW in Manga Barcelona」のタイトルで、2020年6月に東京で開催予定の「オタクサミット2020」に向け、IOEAの理事イベントを集めた会議を催しました。「Manga Barcelona」も理事イベントのひとつですが、「OTAKON」(ワシントン)、「Sakuracon」(シアトル)、「Romics(ローマ)、ACG Hong Kong(香港)、「コミックマーケット(東京)といった世界各地のイベントのオーガナイザーが参加しました。

 WOIは、この「OTAKU SUMMIT PREVIEW ー」の一環として開催されたアカデミックセッションの企画制作への協力を行いました。セッションに参加したのは、「アニメの魂-協働する創造の現場」の作者として知られるマサチューセッツ工科大学のイアン・コンドリー教授、WOIが今年5月に参加した「Nip Pop」を切り回すボローニャ大学のパオラ・スカラベッツァ准教授、高校卒業後すぐに北京に留学し、現在も北京大学で研究を続ける古市雅子准教授と、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の教員でCiP協議会の理事長でもある中村伊知哉教授という4カ国4名の研究者です。

 セッションは、4人の研究者それぞれが、自身が行うポップカルチャー研究に関し、プレゼンし、その後、中村教授をモデレーターとするトークセッション、会場からの質疑に答えるという構成です。言語は一部同時通訳を入れましたが、基本的には英語で行いました。コンドリー先生は、同人コミュニティのパワーや過激なオタク表現を下敷きに創造と協働について語り、スカラベッツァ先生は、アニメ。小説、映画など日本文化の世界への波及について語り、古市先生はアニメ絵が中国の重要戦略に位置付けられており、政策に後押しされている状況を語りました。トークセッションのテーマは「What id Otaku Culture? 」、「What is Future of Otaku Culture?」、国内でも定義が難しいOtaku Cultureをテーマとした議論は白熱し、来年6月の「オタクサミット2020」に同じメンバーで続きを行うこととなりました。
 WOIの今期の活動は、ボローニャ「Nip Pop」でのカンファレンス、ロサンゼルス「Anime Expo」でのスクリーニングイベント開催、そして今回のバルセロナと海外での活動が続いてきましたが、この後は、しばらく国内でのカンファレンスを行おうと考えています。
 皆様、今後とも宜しくお願いいたします。

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